プチシリーズ・主君様日記(・o・)ノ
第4回は忠勝さん。
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葉月某日。
今日は珍しい苗が入ったと、贔屓にしている花屋から連絡が入ったので、さっそく見に行くことにした。
店につくと、店主の顔色が悪い。夏の暑さに体調を崩したのだろうか。体を労るよう伝えたが、店主は何かいいかけようとして口ごもり、うつむくと「すみません…」と小さな声でつぶやいた。
何か心配ごとでもあるのだろうか?
気になりつつも、言われるまま、店の奥にある庭に通される。そこは相変わらず手入れが完璧に行き届いて、今が盛りの花たちが元気一杯に咲いている。
豪奢な大輪の花も、可憐に咲く小さな花も、いつもなら俺の目を楽しませてくれるところだが、今日は違った。
この庭には不釣り合いな、無粋な殺気が俺を取り巻いたからだ。
誰何の声を上げると、浪人と思われる男達が出できた。
俺を倒し名を上げようというらしい。
恐れるような相手ではないが、今日は勝手が違った…大立ち回りすれば、花達を傷つけてしまう。どうしたものかと防戦一方になっていた俺の目に、男達が花を無頓着に踏みにじっている光景がうつった。
……そこからの記憶がない。
気がつくと、男達が呻き声をあげて周囲に横たわっていた。
俺の拳には殴った後が………怒りのあまり暴走してしまったらしい。
もしや花達を俺までも傷つけてしまったかと見渡したが、幸い花達は無事だった。
安堵した俺のそばに店主が走り寄ってきて土下座し、許しを乞うた。
家族を人質にとられ、俺をおびき寄せる道具にされたらしい。
俺のせいで、店主やその家族に迷惑をかけてしまったのだ…詫びねばならないのは俺のほうだ。
いつもと様子が違うのに、事態を察することができなかった自分の未熟さも恥ずかしい。
そう俺は店主に謝罪し、浪人達が踏みにじった花を、買い取らせてもらった。
その花は俺の庭に植え替えた。
花は散ってしまったが、 生きている。来年になれば新たな花を咲かせてくれるだろう。
その花が咲いた時、俺が今より成長している事を願い、鍛錬に励むことにしよう。
本多忠勝 記
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思わずぷっつん忠勝さん。
無意識でも花は死守する忠勝さん。
心優しい戦国最強のお兄ちゃんでした。