By KAMIKAMII


「檻」

 

杏子は肌寒さに、目がさめた。
ゆっくり目を開けると、部屋が暗い。今は何時だろうと、時計を見ようと頭を動かして、あるべきところに時計がないのに気がついた。
「え…」
自分の部屋だと思っていたが、薄暗い室内を見渡すと違う事がわかってがばっと飛び起きた。
「ここ、どこ!?」
見覚えのない部屋のベッドでいつのまにか眠っていたが、なぜ自分がここにいるかわからない。あわてて思いだそうとした時、扉が開く音とともに光が差し込んだ。
「目が覚めたかい」
逆光で扉を開けた人物の表情はしっかりわからなかったが、聞き覚えのある声に杏はホッとした。
「漠良くん…。ここ、どこ? どうして私ここにいるの?」
そう言って立ち上がろうとした時じゃらっと音が鳴り、はじめて自分の足にからみつく冷たい感触に気がついた。そして明かりがつけられ、杏子の目に飛び込んできたのは…
「鎖!? やっやだ、なによこれっ!!!」
左足が鎖で拘束されており、窓にはめられた格子につながっている。杏子は怒りと羞恥で顔を真っ赤にして、つながれた鎖を外そうとしたが、びくともしない。助けを求めるよう漠良を見上げると---------------笑っている。楽しそうに、目を細めて。その表情を見て、はじめて事の重大さに杏子は気がついた。今、目の前にいるのは優しい友人の漠良ではない。千年リングに宿る盗人バクラだ。
「…ひょっとして、これはあんた?」
「ご名答。ここは俺様の部屋だ。正確には宿主のだけどな」
以前、漠良のマンションに皆で来た事がある。だけど寝室には入った事がないので、バクラのマンションだと気がつかなかった。
杏子の背筋を冷たい感触が流れ落ちた。無意識にあとずさり身構える。
そうだ、思いだした。バイトの帰り道で漠良と偶然あった。声をかけようとした瞬間…千年リングの輝きが目に飛び込んできた。それからの記憶がない。
「最低!!!」
杏子はサイドテーブルに置いてあった本を、入口で立ったままのバクラに思いっきり投げつけたが、ひょいっとよけられる。
「誘拐してどうする気よ!?」
「さあ、どうする気だろうな。当ててみな、お姫さま」
「うちの家、お金なんかないわよ」
「金じゃないさ」
馬鹿にしたように鼻で笑うのが憎らしい。
「遊戯たちになんかけしかける気!?」
「はずれ」
「じゃあ何が目的よ!!!」
「あんた」
その言葉は、すぐに杏子の脳に達しなかった。何をいわれたかとっさに理解できなかったのだ。
「何ですって?」
「鈍い女だな……あんたが、欲しいっていったんだよ」
そう言ってニヤニヤ笑っているバクラの顔を、杏子は間抜けな顔で見返したが、ようやく言われた事が脳に達すると、みるみると青ざめた。
バクラがベットに歩み寄ったので杏子はびくりと身体を震わせて、ベッドから逃げようとしたがバクラにすばやく鎖を引っ張られたため、そのままうつ伏せにベッドの上に倒れ込んだ。それでもなお逃げようと身体を回転させたところを、両腕を捕まれベッドに押し付けられる。バクラはベッドの端に腰掛けて、上半身だけを杏子の上に覆い被させる。
「嫌っ…!!!」
「落ち着けよ。無理強いはしねぇよ。大人しくしてたらな」
前髪のかかる距離でバクラがささやいた言葉に、杏子は暴れようとしてやめた。だが身体は強張ったままだ。普段は意志の強さがでている杏子の瞳には、今は恐怖が色濃く出ている。それを愛おしげにのぞき込んで、その柔らかい頬に優しいキスをする。
それから逃れるように顔をそらし、杏子が声を搾り出した。
「………どうする気」
「ここにいてもらう。いつまでかは、あんた次第だな」
バクラは押さえつけていた腕を放して身体を起こした。杏子が少しでも離れようとベッドの上をあとずさる。
「私次第ってどういう事」
脅えているのを見られたくなくて、精一杯の虚勢をはろうとするが、震える声が杏子の意志を裏切る。でも瞳からは恐怖を無理やり追い出して、かわりに怒りの色をのせた。そんな杏子を見ながらパクラは嬉しそうに微笑む。
「あんたが俺を好きになるまで」
「そっそんなの、こんな事されてどうやったらなるっていうのよ!! ふざけないで!!!」
馬鹿げた言葉に杏子は声を荒げたが、バクラは笑顔を崩さず…だが瞳に浮かんでいるのは真剣な光だった。
「ふざけてなんかいないさ」
バクラは鎖を持ち上げ、杏子を見つめながら口付けた。ちゃりっという音が、杏子には妙に大きく響く。
「こうやって、誰の目にもふれないように閉じこめてしまえば、俺しか見なくなるだろう? そのうち、俺しか見えなくなる」
「あんた、狂ってるわ…!!!」
「そうだな。我ながら酔狂さにあきれるぜ。……だが、俺は欲しいものはどんな手を使ってでも手に入れる。どんな手でもだ」
真剣なその狂気をはらんだ瞳は、杏子を凍りつかせるには充分だった。バクラの本気を悟り、杏子の声はのどにはりついたように出てこない。
そんな杏子を見て、フッと笑ってバクラは立ち上がると杏子に背を向けた。
「腹へってるだろう? なんか持ってきてやるよ」
バクラの言葉は優しい響きで、かえって不気味だった。バクラが部屋を出ると、杏子は恐怖にこらえきれないように自分の身体を抱きしめた。
(誰か助けて…!!!)
杏子は祈るように願ったが、それは誰にも届く事はなかった。

 

囚われの、生活が始まった。


 
 
 
 
                                  END

 
KAMIKAMII's COMMENT

おわり。おわりなんですよ、ここで。続きません!! だって、バク杏萌をあおるのが目的だ・か・らv いわゆるチラリズム魂って感じ〜? って逆効果だったら目もあてられませんが(-_-;) Aさん、がんばって妄想をふくらましてくださ〜いv(願) そしてバク杏書いて(笑)
でもまあそうですね、冬コミ受かったら遊戯本出すつもりなので、それで続きを書くかもしれませんが、予定は未定♪←鬼だ!
もし書くならば、どこまでも優しいくせに言うこときかなかったら、「犯すぞ」と脅し文句を吐くバクラに会えますv←いかがわしすぎるわ!(滅殺)

※なお、この小説の関連作品として、JunkAlbumコーナーにバク杏三部作がございます(笑)

 
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