FROM TSUKASA-sama

「Ver. 蝉玉 〜第12部〜」

良い天気ぃ。こんなに良い天気なんだから、ちょっと位散歩したくなるのが人情、ってもんよねえ。
「ふう。」
ため息を一つ。心の方は、今日の天気に合ってないのよね。
風も気持ち良いや。ここまで来れば誰にも見付かんないし、考え事するには丁度良い。
――食べてすぐ横になると太るって言うけど。・・・ま、たまにはいっか。
空が青い。正に雲一つない空。目を閉じる。アイツの顔が浮かぶ。
「ふう。」
もう一つため息。
「またか・・・。」
最近のあたしはちょっとおかしい。ハニーのことよりアイツのことを考えてることが、多くなった・・・。

ハニーに初めて会ったのは、いつだったっけ。
・・・そう。あたしがまだスパイをしてた時、・・・だったわね・・・。
あたし好みのラインを持ち、更にはあたしを「いい女」って言った人。
あの時は、「この人しかいない。」・・・そう思ったっけ・・・。
「蝉玉ちゃん。思い込みだけで突っ走るだけじゃなく、自分の気持ちに素直になることも大切だよ。」
「そうニャ。」
違う。違う!そんなんじゃない!あたしが好きなのはハニーよ!
アイツなんて、失礼だし、口やかましいし。大体において年下のくせに生意気だし!
――そう。アイツは初対面からムカツク奴だった――。

呂岳のウイルスにやられて、目を覚ましたらアイツがいて。
「あ。やっと目ェ覚ましたさ。俺っち、天化って言うさ。」
・・・誰・・・こいつ・・・天・・・化・・・?意識がはっきりする前にかけられた言葉に、反応が鈍る。
声がかけられた方向に視線をうつす。
日に焼けた顔。目立つ傷。さらりとした黒髪。無造作に巻いたバンダナ。煙草。白い歯。筋肉質の肉体。
そしてなにより、意志の強そうな瞳。強い光を放つ、瞳。
全体的には、体育会系好青年、っていったところかしら。まあ顔のラインがあれじゃあ、あたしの好みからはかけ離れてるけど。
「・・・ハニーは?どこ・・・?」
面白くもなさそうに答える。
「あのモグラならどうせ今頃従軍してる世話係の女達にちょっかい出しに行ってるところさ。」
ハニーったら、また!?気持ちを隠して出来るだけいつもの調子で返事をする。
「そう。」
ちょっと考える表情になった後、少しの間を置いて口を開いた。
「――なあ蝉玉。あんた、あのモグラのどこがそんなに良いさ?」
本当に不思議そうに言うな!大きなお世話よ。あんたには関係ない!それに、なんでそんなこと言うの!?
「もっといい男が、周りにいくらでもいるさ?」
コッコイツ!喧嘩売ってるとしか思えんっ。フッ。買ってやろうじゃない!!
「ハニーの悪口っ、言わないでっ!」
「―――――ッ!!」
急にあんなこと言い出したかと思うと、今度はめちゃ機嫌悪くなった?
わかんないなあ。拗ねた顔して横向いちゃってさ。
「そういや、あんたなんであたしの名前知ってんの?ここで何してんのよ。」
「なっ。・・・何って。つ、つまり、あれさ。あんたのことはあんたが寝てる間に色々、その、話を聞いてたさ。モグラとのことも。
そっそれから、その。そっ、そう!スースに。そうそう。スースに頼まれたさ。
『蝉玉がなかなか回復しないようだから、看ててやれ』って。」
「あ・・・。そ、か。―――アリガト・・・。」
「・・・へ?」
へ?とは何だ!ほんっとムカツクわねえ!!
「何よ!?」
「あ。いや。何でもないさ。大丈夫なら、俺っちもう行くさ。」
あはは。何いきなりしどろもどろになってんだか。
・・・あんまり可愛いから、怒る気も失せちゃったのよね。
・・・可愛い!?何考えてんの?あたし?なに・・・。

・・・それにしても、アイツ・・・やっぱり仲間思いな奴ではあるかもね・・・。
戦闘が始まると、いつのまにかあたしと敵との間に立ってる・・・。あたしの視界の範囲内にいてる。
あたしをかばってるつもりなの?ふう。男女差別すんなって。そうよ!ハニーがさらわれた時だって。
「・・・・・・・・・・・・・・・。蝉玉!あんたはここでスースを待ってな!」
はあ?今更そんなこと! ??
「今回のは女が戦える相手じゃないさ。俺っちに任せな。」
だからなんで?ここはもう戦場なのよ?男も女も無いはずでしょ?
「だっ・・・・・・男女差別する気!?あんたムカツク!!」
・・・。会話はそこで途切れちゃったけど・・・。へんなやつよねえ。

「いやあああっ!!」
太公望につき落とされた時、体勢を整え損なったわ。
『ヤバイ!』痛みに耐える為に反射的に目を閉じ、身を硬くした。
「ほっ。と。」
声がした。と同時に下に着いた衝撃は予想に反したものだった。
そうっと目を開けてみるとアイツが笑ってた。ちっ!お姫様抱っことは不覚っ。
喉仏が見える。・・・ふーん。一応こいつも男なのねえ。
「何してるさ。蝉玉。あの位の高さで。――どっか痛い所、無いさ?」
馬鹿にしてるみたいに、からかうように。それでいて本気で心配してるみたい。
「う。うっさいわね!早く降ろしなさいよ!!」
「・・・いやさ。」
いきなり瞳に理解しがたい、それでいて真剣な光が宿る。少し苦しそうに歪む眉。
この感じ・・・前にもあったわね・・・!?こいつ、もしかしてまた拗ねてるの・・・?
何に対して?少年の考えることはわかんないわねえ。・・・そう。わかっちゃいけないのよ。
「なっ!?何言ってんのよ!さっさと追いついて太公望をフクロにしてやるのよ!!
・・・それに、早く行かなきゃハニーを助けるの、先を越されちゃう。・・・。」
しばらく無言であたしを見つめた後、一度目をつぶる。それから妙に押し殺したような声で、言った。
「――わかった。」
へんなやつ。へんなやつ!
「あ。待って。」
もう階段を昇り始めてるアイツを呼び止める。まだちょっとムスッとしたままの顔で振り返る。
「何・・・?」
「アリガト。」
アイツ、人がせっかくお礼言ってあげてんのに、さっさと行っちゃったりしてさ。
何もあんなに急いで行かなくてもいいのに。ほんと、へんなやつ。
・・・でも、あたし、やっぱりおかしくなっちゃったのかな?あの時、ちょっとかっこいいとか、思ってた。
そういや、あの時も。妲己が農民の格好で現れた時。
アイツが妲己に反応しないのを見て、あたしちょっと安心してた・・・。なんで?おかしいなあ・・・。

「スマートなあたしならよゆうよっ!!」
「ああっ!待つさ蝉玉!!あんたに何が出来るさ!!」
ま〜た言ってる。失礼ね。そんなにあたしが信用できないの?
「(ムカ)こんなカベなんか・・・たたっ切ってやるっ!!!」
それとも、そんなに戦いたい?
「くそっ・・・もう知らねぇさアホ女!!!」
それとも、もっと他に何かあるの・・・?

戦いの最中、時々耳に届いていたのは、あたしの名前を呼ぶアイツの声。

「ハニー・・・ハニーが助かればあたし・・」
それで良いはずだった。それでもし死んじゃうようなことになっても。
でも、あの時。劉環に首を絞められた時、あたしまだ死ねないって、思った。
そして、瞼の裏に浮かんだ顔は、ハニーのものじゃ無かった・・・。
「女の子はもっとていねいに扱えこのボケが!!!」
助けてくれたのは、ハニー。また、身を挺して守ってくれた。
アイツなんか、あたしが殺されかけてんのに、見てただけだった!!
・・・わかってる。冷静に考えてみれば、あの位置からじゃ無理だった。間に合わなかった。
でもあの一瞬、助けてくれたのはあんただ、ってあたし、思ったんだよ?
それにあの後だって、負傷したあたしを尻目に、
「ちっ!スース!俺っち先行くさ!!土に強いはずのモグラがこのザマじゃオヤジはもっと危ねぇ!」
ですって?一声くらい、あってもいいんじゃない?
べっ、別に声かけて欲しかったわけでもないけどさ。でも・・・。

その上、やっと合流できたと思ったら、手傷負って帰ってくるし!
「怪我したの!?」
「大したこと無いさ。それよりスースがひと・・・」
スースゥ?アホ、ボケ、カス!!!確かに太公望も心配だけど!今はあんたの傷の事が最優先事項でしょうが!!
「何言ってんのよ!血ぃ出てんじゃん。早く手当しなきゃ!!あっ・・・っ!」
飲み込んだ台詞は“あんまり心配させないでよ”なんだか口に出しちゃいけない気がしたから。
あたしの剣幕に驚いたのか、キョトンとした顔でこっちを見返すアイツ。
治療を受けている間も気が急くのか、落ち着かない。早く行かなきゃってか。甘いわよ!そうはいかない。
きっちり手当が済むまで、絶対に行かせてあげないんだからね!ほんとは、傷が治るまでって言いたいくらいなのに。
ここは戦場だから、さすがにそこまでは言えないけど、ね・・・。
それにしても!人の事なら放っとかないくせに、自分の体は大切にしないんだから!
誰かが心配してるなんて、思ってもいないんだから・・・。
でも、そういや太公望の事心配してた割にはヨウゼン達と先に戻らなかったのよねえ。やっぱり良くわかんないや・・・。

・・・ん・・・。誰か、呼んだ?・・・。
!?ああああああああ?寝てた?私、寝てたあああ!??
しいぃまったあーーーーー!!!!もう空、真っ赤!?
ああ、もーー!こおんな美少女が行方不明になってんのよ?誰か探しに来るくらいの気ィ使いなさいよ!!
ったく、また太公望にガミガミ言われなきゃなんないのお?
あーあーもー。結局、何しに来たんだかなー。考えはまとまんないしさー。
でも、そうね。今日は良い天気だったから、それで良しとするか。
さ。早く帰ろ。晩御飯の時間だわ!

走ってたら、また頭が勝手に働き出す。
あ〜あ。なんで、もうちょっと早く出会わなかったのかなあ。先に。
―――ッ!?あたしまた、ワケわかんない事、考えてる・・・。
――怖い――。
アイツといると、あたしがあたしで無くなっちゃうみたい・・・。明朗快活、単純明解。
そんなあたしはどこへ行っちゃったの?思ってることが言えなくなって・・・。物思いに耽けることも多くなって・・・。
もう・・・!!あいつの事に関してはわかんないことばーっかり!
・・・ほら。自分の気持ちさえわかんなくなっちゃってるじゃない・・・!?
なのに。
あたしはアイツと一緒にいる時のあたしが、結構好き。
アイツの事を考えてるのが、結構楽しい。

・・・そこがまた、わかんないのよねえ・・・

 

- 終 -


作者コメント>
こんなもんを最後まで読んでくださり、ありがとうございました。りぼん風ですねえ。 初挑戦です。気が向いたら御感想なと下さい。特にお叱り、アドバイス大歓迎です。上手くなりたい、とは思ってますので。 あ。そうや。この小説を以って「天化・蝉玉友の会」へのエントリーとさせて頂きますねv(ね♪かみかみーさまv)

KAMIKAMII's COMMENT
司さんよりいただいた小説です〜(^_^) すてきな小説をありがとうございます〜。天化・蝉玉友の会ご入会、ありがとうございます☆ 原作にそって、見事に天蝉話に展開されていますね!!(笑) いや〜んっ不器用な二人がかわいいわっ(#^.^#) 蝉玉のセリフじゃないけど、なんでもっとはやく会ってくれなかったかなこの二人!! そうなりゃ今ごろはジャンプ本誌ではずかしいぐらいラブラブになっていたはずなのに!!(?)こうなりゃモグラは土にうめ・・・げふっげふっげふっ。 ところで前半の天化のセリフからなんですが・・・、ひょっとして司さんの所の太公望って天化に協力的? ちなみにうちの太公望は協力的です(笑) そうそう、御質問の「かみかさんのところの蝉玉は※女か?」ですが、ちがうかもー(^_^;) 天化は童▲ぽいけどねぇ(笑)
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