FROM SUIRENDOU-sama

「※無題」


好きだと言われたその言葉を
鵜呑みに信じられる程、
私は無垢な少女ではなかった。

 

抱き締められたその腕の温もりを
愛されているという自信に繋げられる程、
私は汚れのない女性ではなかった。

 

「愛してる」その言葉一つで、
約束なしに明日を生きていける程、
私は強い女ではなかった。

 

男は愛していなくても女を抱けるのだろうか。

 

私は虚ろに、笑う。
貴方も隣で、笑う。
貴方は何も気付かない。

 

自分の心の中に小さな小さな毛玉が生まれる。
これは、何?
嫉妬。貴方が何も気付かないことへの。
不安。貴方が明日、死ぬかもしれないことへの。

孤独。貴方に「愛してる」と言われる度に、
   貴方に抱かれる度に感じるもの。
怒り。哀しみ。全ての負の感情。


そして―――憎しみ。
貴方が私を置いていくかもしれないことへの。
だからいっそ。
その前に、殺したいと願う。


永久に永遠を。
瞬間に刹那を。

 

そして、気付く。
―――同じじゃない。
自嘲の笑いがこぼれる。
―――私を愛して憎んで、殺そうとしたアイツと。
乾いた声が虚しく響く。
―――同じじゃない。

 

毛玉は心の中に糸を伸ばしてくる。
伸ばしても伸ばしても、
小さな毛玉は途切れない。
限りなく伸びて、伸びて、
そしていつのまにか
心全体に糸を張り巡らせていて、
私は糸に絡め取られて動けなくなっていた。


戦争は終わりに近づいていた。

 

貴方の腕の煙草の香りが
私に染みつく数だけ抱かれた夜。

 

明日。
全てが終わって、また全てが始まる日。

最後の戦い。
死ぬかもしれない。
私か。貴方か。両方か。

貴方の胸の煙草の香りが
私に染みつく数だけ抱かれた夜。

終わらせよう。
何もかも。
貴方がここにいるうちに。
私の側にいるうちに。
明日が来ないうちに。

 

 

手の中の小刀は誰のために用意したもの?
貴方。そして私。

泣きたくなる。
涙が出るくらい、痛くて。


私の髪が貴方の胸の上に流れている。
貴方の手が私の頭の上に生きてる重みを与える。
貴方が呟いた。
微かな声で私の名を。

震える指先で貴方の唇にそっと触れてみる。

―――温かい。

―――殺せない。

ほんの数秒で出来るのに。
それで、もう苦しまなくていいのに。

―――それでも、私はこの人を愛してる。

泣きたくなる。
涙が出るくらい、嬉しくて。

―――劉環。やっぱりアタシとアンタは違うわ。
   アンタみたいに一緒に死のうとは出来ないよ―――

惨めで、誇らしいこの想いの名は間違いなく、「愛」

 

貴方が目を覚ます。

いつもみたいに寝惚けた顔の貴方に、笑顔を贈る。
眩しそうに貴方が笑い返す。
立とうとした私の手を掴んで、とどめた。

 

朝日に反射して
私の指に光るもの。
照れながら
貴方が囁いた言葉。

 

何よりも強い約束。
生きることへの希望。
赤い貴方の顔と、赤い私の指の石。
朝の色。私の髪の色。貴方の煙草の先の色。
生きてる私と貴方の血の色。


糸が切れていく。
ぷつぷつとあっけなく、脆く。
消えていく。
心が緩む。
―――苦しく、ない。

 

私が微笑む。貴方が微笑む。
誓いの代わりに軽いキスを交わす。

 

そして、私が言う。
―――でもちょっとあんたゴーインよっ

 

- 終 -

 

KAMIKAMII's COMMENT
翠蓮堂さまより二作目の小説です。 本当にありがとうございます〜(*^_^*)  ああっもうかみか幸せモード突入ですぅ〜っ(>_<)
できあがっちゃってる二人に乾杯(* ^_^*)/□☆□\(*^_^ *)
「貴方の腕の煙草の香りが私に染みつく数だけ抱かれた夜。」 のセリフ回し絶妙です!!  しかもラストがプロポーズ!! 素敵ステキすてき〜っ!!! 蝉玉の心の葛藤になんか共感しちゃったりしてるし(^_^;)A 涙がでるぐらい人を好きになったとき、苦しいんだけどでも、 その自分の心が誇らしくて、嬉しくて。 でもやっぱり苦しいんだけど幸せになれて。 恋愛は楽しい事ばかりじゃないけど、でも幸せなことですよね。 ああっなんか語りモードに入ってしまった・・・やめとこう(^_^;)A   天化バージョンもあるとか。楽しみにしていま〜すっ★ はやくはやく〜(おねだりっ)
宝話扉頁へ戻る