FROM NAGI-sama

「想い」

「告白しなきゃ自分の想いなんて伝わらないよ」
そう、楊ぜんが言っていたのを思い出した。その楊ぜんの後ろには、竜吉公主が顔を赤らめて立っていた。
「伝わったところで向こうが想ってくれなくちゃ意味無いさ…」
天化はつぶやいてタバコを投げ捨てた。まだ火の着いたタバコを足でグッと踏みつけて歩きだした。

ここは、周軍の本拠地。あちこちに兵隊用のテントが張ってある。その内のひとつが蝉玉のテントである。蝉玉は昨日から風邪をひいて寝込んでいた。天化は何度と無くお見舞いに行ったが、どうも話せる状態じゃなかったし、
そばに蝉玉の父親が居て、しきりにこっちを睨んでくるので、すぐに出てきてしまった。
しかし、今日はもう大分良くなったようだ。天化がテントに入って行くと、
「何、アンタまた来たの?」
と笑った。
「あーたの事がすっごく気になるからさ」
と言おうと思ったが、そんな恥ずかしい事は言えずに、
「あーたがいつまでも風邪引いてると進軍にさしさわりがあるからさ」
と言った。それでも蝉玉は屈託のない笑顔で、「ありがとう、もう平気よ」と言った。
「告白しなきゃ自分の想いなんて伝わらないよ」
また、楊ぜんの言葉が頭の中で聞こえる。
言うか、言うまいか…。言ったところで、どうせ駄目に決まってる。こいつにはモグラがいるさ…。だけどちょっとだけでも、訊いてみたい。
「蝉玉さあ、アンタ好きなヤツいんの?」
え?と少し驚いた顔で目を上げる蝉玉。ちょっと考えてから言った。
「いないわよ」
「モグラは?」
「ああ、ハニーは可愛いだけよ。動物として」
「それは、恋愛の好きとは違うさ?」
「違うわね。アンタは?」
沈黙が流れる。
「いないさ」
「そう、でも何で急に?いつもそんなこと全然言わないのに」
「深い意味は無し!さっさと風邪治せよ!」
そう言って天化はテントから出ていった。
後に残された蝉玉はため息をついて言った。
「ちょっと期待しちゃったんだけどなー…『好きな人いるか』って訊かれた時…」
そして悲しそうにちょっと笑ってつぶやいた。
「好きだよ、天化」

その夜。
天化は馬にまたがった。明日には朝歌に入る。
その前に、紂王を。武成王の意志を継ぐために。傷がうずく。死ぬかもしれない。父親を倒したほどの紂王だ。相打ちになる可能性も無いとは言い切れない。
でも、この他に道は無い。馬を走らせた。少し走ってから止まり、蝉玉のテントの方を向いてしばらく考えた。今生の別れになるのか?言おう。風が天化を少し押した。
「……やめた」
そう言い残し、天化は馬を走らせた。

翌朝、蝉玉は一筋の光を見た。朝歌の上空から、真っ直ぐと、空へ、空へ。

 

- 終 -


作者コメント>
サヨナラ天化という事です。 私はやっぱりモグラは動物として可愛がっていると思うので、こうしました。 天化×蝉玉を指示する者にとってモグラほど邪魔な存在はない…嫌いじゃあないのですが。 お目汚し失礼致しました。

KAMIKAMII's COMMENT
涼風凪さんより頂いた、天化×蝉玉小説です。ステキ小説をありがとうございました!! あんもう、もどかしいっ…(^_^;) でも天化ってこーいうやつですよねぇ…自分の中にためちゃって、自己完結しちゃうの。よくも悪くも。その不器用さが魅力的っていうんだから罪作り。この時、天化が告白してたら違う結末だったのかも、ですね(涙)
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