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FROM
SERI-sama
「※無題」
あいつが死んじゃった。
それを太公望から聞いた時、あたしは「そう・・・」と答えただけだった。
だって、しょうがないじゃない。いきなり言われたってわかんないよ。
封神台に飛ばされちゃったから、死体だってないし、別れた時の天化はいつも通りで・・・死んじゃった、もういないんだよって突然言われても「まあ、そんなんですか?私悲しいわ」なんですぐに思えるわけないじゃない。
だからあたしはそのままそこに突っ立っていた。
王都が陥落して、紂王様が処刑されて、天祥君がわんわん泣いて飛刀がそれをぐにゃぐにゃ曲がりながら慰めていて、みんな忙しそうだったけどあたしはなんにもせずにそこに立っていた。誰も文句をいわなかったから、夜になるまでずっと。
でもいつまでもそんなとこにいたって、単なる皆さんの通行の邪魔じゃない。夜になったらお腹だって冷えちゃうしさ。だからあてがわれた部屋にいって、ベットに座って、ああ、屋根があるわ、今日は野宿しなくていいのね、うれしいなとか思って、そしたらなんか急に思い出していた。
あいつがあたしを好きだって言った時の事。
あたしにはハニ−がいるからって言ったら、あいつは子供の無知を笑う大人のような顔で笑ったのよ。
「蝉玉はモグラのどこが好きさ?」
「どこって・・・ハニ−はやさしいわ!あたしのこと助けてくれたし。後は主に顔かしら」
あいつはやれやれとでも言ったふうに肩をすくめた。
「やさしいね・・・。そうさね、確かにあいつはやさしいさ」
「な、なによ。何が言いたいのよ!?」
「確かにあいつはやさしいけど、それは蝉玉が女だからで、蝉玉が蝉玉だからじゃないさ」
「なっ・・・!」
あんまりな言い方だったから、当然あたしは怒った。なにか言ってやりたかったけど、天化の妙に静かな口調があたしの口をつぐませた。
「あいつは呼吸をするのと同じぐらいに自然に女にはやさしいさ。男である自分が女の為に何かするのは・・・時には命すら賭けて守るのは当然の事だと考えている、ある意味とことん雄の本能に忠実な奴さ。あいつは女を傷つけない・・・蝉玉のことも拒絶するような素振りを見せても本当に側にいなきゃいけない時に、いなかったためしはない・・・だから蝉玉はモグラが好きさ」
「あのねえ、言っとくけどハニ−はあたしを拒絶してなんか・・・」
「でもそれは恋なんかじゃないさ」
「え・・・?」
あの時も、あたしは何を言われたのかわかんなかった。
でもあたしの手はその言葉を理解する前にあいつの頬を張り倒していた。
「なによ・・・・なによ!なによ!!」
頭が怒りで真っ白になって、うまく言葉が見つからない。
「あんたにあたし達の何がわかるってゆ−の!?ふられたからっていちゃもんつけないでよッ」
天化は赤くなった頬を手で押さえるでもなく、静かにあたしの方を見た。
「あいつと一緒にいても蝉玉は幸せなだけさ・・・」
「それのどこがいけないって言うの?」
あたしは鼻で笑った。天化は悲しそうに笑った。
「幸せなだけじゃ、恋はできないさ」
「恋って二人でいて、幸せってことじゃないの?」
「蝉玉はまだ、恋を知らないさ」
「知ってるわよ。あたしはハニ−が好きなんだもの!」
「それは恋じゃないさ・・・」
「わかんないよ、あんたの言ってること・・・」
「あいつと一緒にいて蝉玉が幸せなのは、あいつが蝉玉に何も求めないからさ。あいつは与えるだけ。蝉玉が追いかけたい時には逃げて、本当に寂しい時には側に来てくれる・・・蝉玉が甘えたい時にだけ甘えても・・・蝉玉はあいつにだって一人になりたい時があるんだって考えたことが一度でもあるさ?あいつは蝉玉にどんなことだってできる。抱くことだって・・・。でもそうしないのは蝉玉が心の底ではそんな行為をしたいだなんて思ってないのを知っているから・・・」
理解できない言葉があたしの心に突き刺さる。
「蝉玉はモグラに甘えてるだけさ。モグラはそれを知っていて、蝉玉を許しているだけ・・・」
ソンナモノハ恋ジャナイ。
とうとう最後まで理解できなかった、あいつがあたしに突き付けた言葉の数々。
あの日、天化をもう一発殴って、あたしは泣きながらハニ−の所へ駆け込んだ。
ハニ−はあたしを見て、まずいって顏したけど、あたしが泣いていたから宝貝をはずした手であたしの頭を撫でてくれた。泣き止むまで側にいてくれた。
あたしは天化なんかともう口きくの止めようって決意して、それから三日で無視するのに飽きて。それからもいろいろあって。敵も味方もたくさん死んで、天化のお父さんと御師匠様も亡くなって。
ああ、それでもあたし、あんたはいつまでもそこにいるんだと思ってたわ。
「天化・・・」
ぽつりと呟いた時、ふいに目が熱くなって視界が歪んだ。
だいぶ時間をかけて、あたしは自分が泣いてることに気が付いた。
胸に何かが詰まったようで、苦しくて苦しくてたまらない。嗚咽するのにも一苦労だった。
「天化・・・ばかぁ・・・」
なんでいないのよ?いなくなっていいなんて、いつあたしが許可したのよ?
あんたはあたしを好きだって言ったくせに。
好きだって言うんなら、あんたにはあたしのこと幸せにする義務があったのに。
「・・・・ぅ・・・くっ・・・」
ハニ−ならこんなこと絶対にしないわ。いつだってあたしを楽しくさせることしかしないのよ。
(それは本当の恋じゃないさ)
なんであたしはこんなに天化のことばかり考えてるんだろう?
なんであたしをこんなに悲しませている男の事を考えてるんだろう?
全然、楽しくないのに。
全然、幸せじゃないのに。
でもあたしの中はこんなに天化であふれそうになっている。自分の心なのに、どうすることもできない。
「・・て・・んか・・・・ッ」
辛くて、苦しくて、それでもあたしはこんな思いをあたしにさせている男に会いたかった。もう一度会えるためならなんでもするだろうと思った。
あの日から遠く離れて、ようやくあたしは恋を知った。
- 終 -
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