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FROM
RINREN-sama
「伝言」
「こんな所に居たのかい」
崑崙山2の頂上に座った後ろ姿に、涼しい呆れ声がかかる。声をかけられた方は黙っていた。
「無視(シカト)、ね・・・・・・」
彼はため息をついて、自らの容姿を変化させた。
「まァた恋煩い?」
特有の口調で背後から言うと、彼女は後ろを向いたまま言った。
「そのふざけた変化今すぐ解かないと、五光石ぶつけるわよ」
「やれやれ、なかなか物騒な事を言うね君は。折角サービスしてあげたのに」
ぶつくさ言いながら、それでも元の姿に戻る。
「・・・・・・で、何やってるんだい、こんな所で?愛しのハニーも追っかけないで?」
「どうだっていいでしょ、そんなこと、あんたに」
「うん、確かにどうだっていいね、そんなこと」
あっさり言って、受け流す。蝉玉の隣に座りながら、また言った。
「でも僕が聞きたいから」
「はぁ?」
「理由はそれだけ。いけない?」
「い、いけないも何も・・・」
楊ぜんのマイペースな態度には、流石の蝉玉も戸惑ってしまう。
「悪趣味ね」
「かもね。でも人の色恋沙汰って聞く分には面白いでしょ?」
「さあね」
「天化くんのこと」
どきりとした。
「やっぱり好きだったんだ?」
立てた膝に頭を乗せて、蝉玉をのぞきこむ。
「・・・・・・五光石くらう?」
「やめとく」
「遠慮しないでいいわよ」
「君に怪我させたら怒られそうだし」
「誰に?」
「さあ?」
笑ってごまかした。
「何にせよ僕が稽古でもないのに君に怪我させたら、皆に非難されるからね。それは嫌」
「どうして?」
こんな問い馬鹿みたいだ、と思ったけど聞いてみた。
「人気と信頼度が落ちるし、それに――」
冗談みたいな答えに、添加の接続詞がつく。
「それに?」
「天化くんに嫌われる」
「嫌われる?」
「天化くんてフェミニストだから」
「フェミニストとかそういう問題じゃなくて、アイツは封神されちゃったじゃないっ」
認めたくなかった事実を口に出してしまったら、急に悲しくなった。
「そうだね、でも会いに行ったら即莫邪でブッた斬られそうだから」
「会いに行く?」
「以前張奎と師叔が行ったろう?」
「会えたの?」
「・・・らしいね」
「あんたは?行ったことあるの?」
「一度だけ」
「誰に会いに?」
「師匠と、天化くん」
「天化に会ったの!?」
気がついたら叫んでいた。
楊ぜんはクスッと笑った。嫌な笑い方じゃなかった。
「元気そうだった。君のこと、色々聞かれた」
「え?」
「泣いてないかとか、恋煩いしてないかとか」
「それじゃあ、私がガキみたいじゃないっ」
「それから・・・・・・伝言を頼まれた」
「伝言」
「『約束守れなくてごめん』だって。約束って何?」
「えっ・・・」
「・・・・・・まあいいや。それとね、僕にもこんなこと言った。『俺っちの代わりに、蝉玉 を守ってくれ』って。
『楊ぜんさんは強いから、ラクショーだろ?』って」
「〜〜〜〜〜///」
恥ずかしくて顔があつくなった。蝉玉は顔を背けた。
「あっち行って」
「泣くの?」
「うるさいわねっ!」
「・・・・・・・・・・・・」
楊ぜんはスイと立ち上がり、数歩後ろへ下がった。
「・・・・・・淋しい?」
「淋しくなんかないわよっ!」
涙声。
楊ぜんはため息をついた。
「素直じゃないんだから、全く」
「・・・るさい、わね・・・・・・っ」
「特別サービスだよー?」
「何言って・・・」
振り向きかけた蝉玉の顔に、楊ぜんの白い肩掛けが被さった。
「ぶっ」
ヴヴ・・・ン
「見られたくなきゃ、それでも被ってるさ」
ジ、ジジッ
「・・・・・・・・・・・・」
肩掛けを頭から被ったまま、ぎゅっと握り締める。
「・・・・・・お礼は、言わないからね」
「ん」
コトンと一歩向こうへ遠ざかる足音がして、
「・・・あぁそうだ、一番大事な伝言があった」
ちゃんとした楊ぜんの声がして、
もう一度こちらへ戻ってくる足音がして。
「怒らないでね、彼に頼まれたことだから」
「・・・・・・?」
しゃがみ込む衣擦れの音。
肩に触れるあたたかな感触。
『ズットダイスキダッタケド、モウ守レナイケド、ソレデモズットダイスキダカラ。』
「―――っ」
耳の傍で囁かれた言葉。
「・・・・・・これだけだよ」
すくっと背後の人物が立ち上がる。
「・・・・・・・・・ったんだ」
「え?」
「死んでも、愛してる、とは言ってくれなかったんだ」
最後まで気の利かないガキね。
「・・・・・・天化くんはね『愛してる』なんて言葉使いたくないんだってさ。自分はその言葉の重みを正しく表せないからって」
「え・・・・・・?」
「彼は人間界に来てから女の人に『ダイスキ』なんて言ったことなかったよ。だって彼の女性に対しての『ダイスキ』は、
『アイシテル』と同義語だから」
「え?」
「余計なことを言いすぎた。じゃあね」
「あ・・・・・・」
遠ざかる足音。
「・・・・・・・・・っふ・・・・・・」
聞こえない嗚咽。
- 終 -
作者コメント>
あとがきという名の言い訳。 楊ぜんさんにデリカシーゼロの部分があったことを楊ぜんファンの方に深くお詫びします。でもうちの楊ぜんさんは私が天蝉を書くといつもこんな感じです。天化にも蝉玉
にもちょっかい出してます。 年上の余裕、と言うよりは、ただ単になかなか進展しない二人に助言したりからかったりしてるだけなんですけどね。
こんなのでも喜んでいただければ幸いです。
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