|
FROM
RIE-sama
「乱気流」
「楊ぜん君。」
「はい?。」
ここは崑崙山、玉泉山金霞洞。
他の洞府がにぎやかなのに対して、なぜかシン、とした、冷涼な感じがしている。
住人が少ないせいだ。2人しかいない。
しかも、今、そのうちの1人は外出していた。
残された1人−門徒である楊ぜんは、暇な時間を潰すために、庭に花を植えていたところだった。(ヤマユリ:笑)
が、その時、実に珍しい訪問者が訪れたのである。
声をかけられ、振り向き、見上げると、そこには穏やかな笑顔があった。
「・・・どなたかと思えば。」
楊ぜんは少し驚きながら、立ち上がった。
客と目線の位置が逆転する。
「普賢真人さまでしたか。」
「久しいね。元気かい?。」
相変わらずにこにこしながら、普賢真人はそう言った。
楊ぜんはその顔を見て、少し苦笑する。
「ええ。普賢真人さまもお変わりないようですね。」
「ふふ、残念ながらね・・・。」
指を唇に当てて、悪魔的な笑いを浮かべながら、彼は言った。
やはり全然変わっていない。
「・・・本当に残念ですよ。」
ぼそり、と楊ぜんはそう言った。
これはかなり深いところで本気である。
「え?。なんだって?。」
「いえ・・・なんでもありません。」
普賢は更に、笑みを強く浮かべた。
「そう?。ぼくには『残念』って聞こえたけど?。ふふふ。」
「・・・・・。」
楊ぜんは呆れながら、小さく「はあ・・・。」と言って、少し下を向いた。
やはりこの師伯は苦手である・・・というか思いっきり気が合わない。
会うと、なんだか拒絶反応が出るような気さえする。
その原因が小さな頃のある事件にあることは、師匠から聞いて知っていた。
(・・・事件というか、なんというか・・・。)
「ぎょっくんは?。いないの?。」
「・・・・今は、出かけてますケド。」
「なーんだ。つまんないの。せっかく遊びに来たのに。」
心底つまらなそうにそう言うと、普賢はくるりと方向を変えて、ある木を眺めた。
一本の柳の木。
「・・・これを見ると思い出すよね・・・。」
「?何をですか?。」
楊ぜんが何気なくそう問うと、普賢はびっくりしたように楊ぜんの横顔を見た。
「え!覚えてないの・・・君。」
「だから、何をですか?。」
眉間に皺を寄せて、そう、普賢に尋ねると、彼はくっくっく・・・と喉を鳴らした。
「そっかぁ・・・覚えてないんだね。もう随分昔のことだもんね。」
「・・・僕が小さい頃のことですか?。」
「うん、まだ・・・・そう、この若木くらい小さかった時だよ、君が。」
「・・・・・。」
全く思い出せない。
単なる柳の木としか、感情が湧かない。
「ふふ・・・君もまだ小さくってさ。天才、なんて称号もなくて。懐かしいなあ。」
「・・・だから、何があったんですか?。」
「この話を知っているのって、僕とぎょっくんだけなんだよね・・・。言ったら、君の恥になるからって、ぎょっくんに口止めされてたんだよ。」
「恥?。」
心臓がばくばくし始めた。
一体、自分は何をやったと言うのだろう・・・?。
「うーん、まあ、確かに『すっごく』恥ずかしい話なんだよね・・・。でもそろそろ時効かな?。太乙あたりに喋ってみようかな。喜ぶだろうな・・・・。」
「ちょっ・・・・ちょっと待って下さい!!一体何なんですか!。」
恥
恥
自分の・・・・?。
小さい頃の記憶はあまり無いから、恐ろしい・・・。
普賢は、また意地悪な、子悪魔のような笑いを浮かべ、くすくす笑った。
「それはね〜ぇ・・・・。」
「それは・・・?。」
思わず、息を飲んだ。
普賢は楊ぜんに顔を近づけた。そして耳元で囁いた。
「それは秘密だよ。」
「!!。」
ふふっと笑って、楊ぜんから離れ、普賢は黄巾力士に飛び乗った。
「じゃあね〜!また遊びに来るよ!。」
「ちょっと待って下さい!!。普賢さまっ!!!。」
楊ぜんは追っかけの体制に入ったが、力士はもう空中に浮かんでいた。
その上で普賢がにこやかに手を振る。(皇族のように)
「ま〜た〜ね〜♪。」
「まっ・・・待てぇっ!!!。」
***3hours Later***
「ただいま。今帰ったぞ。」
玉鼎真人が、家の(?)扉を開けると、そこには誰もいなかった。
「?。楊ぜん、いないのか?。」
辺りを見回しても、弟子の姿は無い。
「?。どうかしたのかな。」
「し〜しょ〜お〜・・・・。」
「ぐをぁっ・・・!?@:>★☆!?(びっくり)」
とんでもないところから声が聞こえ、突然姿も現れたので、思わず玉鼎真人はのけぞった。
楊ぜんは彼のすぐ横でしゃがんでいた。
「・・・どうしたのだ、楊ぜん。気配が全く無かったぞ?。」
「・・・師匠、一つ、お聞きしたいことがあるのですが・・・。」
「ん?。」
楊ぜんの必死の形相に、玉鼎真人はまたものけぞった。
「僕が小さい頃、あの庭の右にある柳で、何か事件がありました?。」
「事件・・・?。」
「なんだか、僕が失態をして・・・それを普賢さまに見られていて・・・師匠が口止めしたって・・・。」
「なんだそれは・・・?。普賢から聞いたのか?。」
「そうです・・・。」
玉鼎真人は、一寸、眉をひそめた。
「私が口止めしたと?。」
「はい。」
「お前が何かやらかして?。」
「はい。」
彼は横を眺めるようにしてしばらく考えていたが、やがて首を振った。
「私は知らないぞ、そんなこと。口止めなどした覚えはない。」
「へ!?。本当ですか?。」
「うむ。・・・というより、あの柳はお前が小さい頃は無かったではないか。確かここ2、3年前に人間界から移植したものだぞ?。」
「はっ!!!!。」
そっ・・・そう言えば・・・。
そうつぶやくと、ちょっとの間虚ろな目をしから楊ぜんは下を向いた。
「よ・・・楊ぜん?。」
雰囲気が変化するのが、玉鼎には分かった。
「・・・く・・・くくくく・・・。」
「!!よ、楊ぜん。」
「ふふふ、あっはっはっは!!。次は・・・無いですよ・・・普賢さま・・・♪。」
(玉鼎:ぞくっ・・。)
ところ変わって、玉泉山近くの浮き岩−
「おーい、もっくん。もう修行はやめて、お茶にしようよ〜!。」
「あ、師匠。」
木たくは、一人で剣の練習をしていた。もうすこしで素振り10000回だったが、師匠の言葉に素直に従い、黄巾力士に急ぐ。
「エライね、修行。はやく仙人になりたいかい?。」
「ええ、まあ。・・・師匠はどこにいってらしたんですか?。」
「ふふふ、ちょっと遊びにね〜。あの子は素直で楽しいなあ。玉鼎がいなくて良かったよ〜。」
「・・・・・・・。(楊ぜんさん、またいぢめられたのか・・・。)」
太公望が動き出す2年前、天気の良い午後のことだった。
- 終 -
|