FROM RIE-sama

「蝉玉姫の優雅な1日?」その2

●第3章

また竜髭虎城大広間。

「・・・なんか変な人だったわねえ・・。」
そそくさと立ち去っていった男の後ろ姿を見て、蝉玉がため息と共に言った。
「でもそういう事言うと、この話に出てくるヒトって、みんな変っスよねえ・・・。」
「ま、あたし以外はね。」
「・・・・・・。」
腰に手をあてて言い切る蝉玉を見て、スープーもため息をついた。

パーティはどんどん派手ににぎやかになっていた。
たくさんの料理と(シェフは行方不明だが)色とりどりの花がたくさん並べられている。だが肝心の王子様はまだ三人しかいないようだった。
「っと、あれは誰?。さっきの二人以外の。」
と言って蝉玉が、大きな机の前にいる男を指差した。
「ああ、あれはっスねえ・・・・。」
「楊任王子でございますよ。」
と、また後ろから声が。
振り向くと、かちっとした軍服に身を包んだ、女性が立っていた。
長く美しい髪を後ろで束ね、その闇のような漆黒が整った顔だちを引き立て、かえって艶めかしく思えるほどに凛々しかった。
「お久しぶりですね、蝉玉姫。」
「あら、近衛連隊長。」
巷で「竜髭虎城のオスカル」として文武両方において名高い竜吉公主であった。
彼女の後ろには、二人の女性近衛兵、赤雲と碧雲が控えている。
「相変わらずお綺麗っスねえ。今日は蝉玉姫の護衛っスか?。」
「そうだ。本来は蝉玉姫の姉君、だっき姫の護衛だが・・・今日は特別な日なのでな。」「っていうか、あの姫様に護衛なんて要らないわよねえ・・。」
赤雲が言った。竜吉は少し振り返り、目線で彼女を黙らせる。
「特別な日って言われても、何がなんだか良くわかんないんだけどね、あたし。」
蝉玉がため息をついた。竜吉が苦笑する。
「そうかもしれませんね。」
「だってさあ、婚約パーティなんだかんだって言ってもさ、お見合い&強制結婚パーティじゃないっ!!。あたしがのぞんでるのはねっ、ロマンティックなラヴ・ロマンスなのよ!!。」
「でも蝉玉姫の趣味が変わってるっスから・・・・・・。」
「どーゆー意味よっ。」
蝉玉が横目でスープーを睨む。
・・・いいえ、と小さく首を振ってスープーは縮こまった。
その様子を見て、竜吉がにっこりと笑う。
「それでは。私はまた場内の点検をして参りますので。ですがすぐに戻ります。
さあ、行くぞ。赤雲、碧雲。ついてまいれ。」
「はーい。公主さま。」
そうして、三人の華やかな近衛隊は去って行った。
「やっぱいつ見ても公主さんは美しいっスねー。」
微かに頬を染めながらスープーが言った。
「でももういい歳でしょ?。結婚の話一つでないわね。」
「う。あまり美人だから、男性の方がひいてしまうんスかねえ。」
「そういうものかしら?。」
蝉玉は、竜吉に対してあまり好意的とは言えないようだ。女性同士となると何か違うのかもしれない、とスープーは思った。
「と、とにかく、楊任王子の説明をするっスね。」
「あらあ、いいわよぅ。」
気の無い様子で、蝉玉はひらひらひらと手を振った。
「興味ぜーろ。はいっ。飛ばし飛ばし。」
「ひ、ひどいッスねえ。」
女性はこれだから・・・とスープーはため息をついた。


そしてまた場所は変わり、ここは洞窟。

「な・・・・何をしておる。おぬしら・・・。」
太公望は目の前で広げられている様子を見て愕然とした。
ぶん中、王魔、太乙、そしてナタクが一つのボードを囲んで座っている。
異様な光景だ。
太公望を見た太乙が手を振った。
「えーん。たーいこーうぼーう。助けてよー。このヒトたち自分が勝つまで帰してくれないんだよー。私はもう帰りたいのにぃ。」
王:「逃げるな、太乙。それでも仙人か!?。ぶん仲さまを見習え。このように集中して おられるぞ。」
ぶん:「ふ・・・。当然のことだ。」
那:「黙れ。ちゃんとゲームしろ。」

太公望:「だー!!!。だから何をしておるのだーおぬしらー!!。」
「何言ってんのさ、望ちゃん。見て分かるじゃない。人生ゲームでしょ。ねえ、僕もいれてよ。」
普賢真人がちょいっとその輪の中に入る。
「勝手に入るなーっ。」
「太公望、血圧あがっちゃうよ。」
太乙が心配そうに言う。そうそう、と普賢真人も頷いた。
「誰が上がらせとるんじゃ、誰が・・・・。」
「五月蝿い。黙れ、ぼけ。」
那たくが火先槍を向けた。うっと太公望がひく。
「ねーえ、聞いてよ。太公望。今さっきね、王魔くんが『台風発生。8コマ以内にいる人は財産の半分を失う』っていうとこに止まっちゃったんだよ。酷いよねー。」
「・・・なるほど、さっきの台風というのはそれか・・・。」
「私は今までトップだったのにさっ。半分なんて、さ・い・あ・く。だーれかさんの所為でさあーっ。」
どうやらとばっちりを受けたらしい太乙は唇を尖らせた。帰りたいと言っておきながら、やはり勝ちたいのだろうか。
「そ、そんなっ。私のせいにしないでくれ。那たくだって『仕返し』に止まったじゃないか。」
「あ、そーそー。そういう時は決まって私に金払わせるんだよねー、この子。そんな子に育てたつもりなかったんだけどね。」
「五月蝿いっ。お前だって『パンチラ写真あっせん容疑で逮捕。10マス戻る』に止まっただろ。」
「うっ。」
私はパンチラなんて興味ないのになあ・・・と太乙がぶつぶつ言った。それを見て、王魔がぶん仲の方を向く。
「ぶん仲さまはけっこうまともですよね、いつも。」
「ふ。」
「でも何故かいつもビリなんだよねー。」
ぷちぃ。
太乙しまったとばかりに慌てて口を覆うが、すでに後のまつり。
ぶん仲、禁鞭を振り出す。
その場阿鼻叫喚の地獄に―。

ぎゃーああああああっ。

「あらあら、理解しあえないっていうのは、悲しいことだね。」


再び城。門の前。

「ふう。こんなもんでいいかな?。」
くるりと回って、一通り自らの全身を眺め回し、楊ぜんは胸の辺りをぱんぱん、と叩いた。まるで七五三の洋服を着た幼い男の子のようで、その仕草がなんだか可愛い。
正真正銘の王子様スタイルだった。フィギュアスケートのコスチュームに近い。
全て、玉鼎真人のお手製である。
少しヒールのある靴を履き、長い髪を後ろでやや低めにリボンで結んだ。髪の色よりも少し濃い蒼のこのリボンも、玉鼎真人の用意したものである。
尊敬し、感謝しつつも、「師匠って・・・?」と楊ぜんは少し思った。
だが、今の自分の格好に嫌な感じはしなかった。なかなか似合っているのではないかと思う。こんな時、母に感謝したりする。
「おいで、コウ天犬。」
実体化していた愛犬を、そっと袖口(レース付き)にしまう。
そして、門番一人いない不用心な城の門を、ぎぃと開けた。
古いもの特有の不快な軋む音が聞こえ、楊ぜんは少し目を細めた。が、門はすぐに開いた。ぱあと明るい光が差し込む。

門を開けると、なぜか大広間に直結していた。不思議な造りだな、と首をかしげる。が、そのまま足を進めた。
そこはたくさんの人と物に溢れ、さすが婚約披露パーティだと思わせるほどに華やかだった。そういう場所は嫌いではないが、あまり得意とは言えず、楊ぜんは少し苦笑いを浮かべた。
すると、召し使いらしい少女が近づいてきた。
可愛らしい双眸でこちらを見つめ、言った。
「どちら様ですか?。」
「あ、僕は周城の、姫発王子です。招待されて来たのですが・・・。」
「姫発さまですね。お待ちしておりました。こちらへどうぞ。」
実に事務的に少女はそう返し、楊ぜんを導いた。
そして、小さなテーブルのところまでくると、飲み物を進め、そして向こうの方を見た。「あのお方が、蝉玉姫さまでございます。」
少女の目線を追うと、そこにはカバが一匹と、背の高い少女がいた。
「あの人が・・・。」
「では、どうぞごゆっくり。」
そう言うと、召し使いの少女は去って行った。
「へえ。」
蝉玉姫を眺め、悪くない、と楊ぜんは思った。まあまあである。美しいという感じではないが可愛い。自分の好みとはいささか外れているが、美少女と言えるだろう。
(っと、そんな事を鑑定するために来たわけじゃないんだっけ。)
美人となるとどうしても興味を持ってしまう自分自身に苦笑してから、楊ぜんは左ポケットから小さな紙切れを取り出した。
(この場所に招待されているはずなんだが、こいつも。)
お目当ての人物は見当たらない。
(もう少し待ってみるか。)
手元にあったワインをぐっと飲み干す。酒豪ではないが、酒はよく飲む方だ。最近では付き合いという感じで飲むことが多い。酒好きの人物と接触があるからだ。
ちなみに玉鼎真人は下戸である。
気分が良くなってきた。このまま順調に運べばいいのだが。

「あれ、新しい人が来たわよ。ほら、あの人。」
柱の側の小さなテーブルで、一人、ワインを飲んでいる男の姿を、蝉玉は見つけた。
「え、どのヒトっスか?。」
「ほら、あの髪の長い人。」
指指すと、スープーは少し怪訝そうな顔をした。
「あ、あの人っスか?。・・・うーん。見覚えないっスねえ。ボクが知らないってことは、周城の、姫発王子じゃないっスか?。それにしても、すごい美形っスねえ。あんないい男、滅多にいないっスよ!。姫、チャンスっス。」
「えー。確かにいい男だし、美形だけど、趣味じゃないわ。」
「えっ・・・・。」
「それにトーン頭だし。」
「それもそうっスねえ。でも本当に変な趣味っスねえ・・・・。」
「人の勝手でしょ。」
そう言って、蝉玉はうーんと唸った。
「どうしたっスか?。」
考え込む蝉玉に、スープーが言った。
「ねえ、あと一人よねえ?。婚約者候補。どんな奴かしら。」
「さあ、誰っスかねえ。王子は結構いっぱいいるから、誰が選べばれてくるか、ボクにもわかんないっス。」
「そっかあ・・・・・・。」
蝉玉はため息をついた。


「公主さまっ。」
少し裏返った声に呼ばれて、振り向くと、興奮した顔の碧雲がいた。
「ん?。どうした?。」
「ほら、あそこ、あそこですーっ!。」
「何だ?。」
怪訝そうに眉間に皺を寄せ、公主は碧雲の指差した方を見た。
そこには、一人の男。
いかにも、王子というようなひらひらとした、そして豪華な衣装を身に纏い、すらりと立っている。
・・・美形だ。碧雲が騒ぐ理由が分かる。
「ねーねーかっこいいですよねっ。公主さま。もう、私の好みジャストミートですぅ。」「ん・・・ふむ。そうじゃな。」
確かに、碧雲でなくともかっこいいと思うだろう、と公主は考えた。
だが、それよりも別のことが頭に浮かんだ。
王子だとしたら、彼はどこの城の王子なのだろう。見覚えが無いのが変だ。
近衛兵という職業柄、一応、他国の王族の顔は把握しているつもりだ。
「ねっ、ねっ。赤雲もそう思うでしょう?。」
「うん、ええまあ。確かに格好いいわね。すっごい美形だし。でもあたしはあの大工んとこの息子の方が好みねえ。」
「へえ。」
碧雲が目を丸くした。そんな話は初耳だったからだ。確か、大工の息子といえば・・・。(え、あの小さい坊やのこと?。・・・・・赤雲って何気にロリコン?。)
そう思って、眉間に皺を寄せつつ、姉貴分を見やるが、赤雲はそれに気付かぬ様子で、テーブルに置かれていたクッキーをむしゃむしゃと食べていた。
ふと横の上司を見やると、彼女はその美しい顔を少ししかめて、何か考えていた。
「竜吉公主様、どうなさったんですか?。」
「ん・・・いや、少し気になることがあっての。」
「何か?。」
「いや・・・私の思い過ごしかもしれない。お前たちは気にしなくて良いよ。」
「はい・・・。」
二人は顔を見合わせて、不思議そうに頷いた。


再び洞窟内

「ふひぃ・・・まじで死ぬかと思ったぞ・・・。」
なんとか太乙の九竜神火とうを奪い、隠れた太公望は、ぼろぼろになっていたが、九死に一生を得ていた。
「ふふふ。望ちゃんもオーバーだねぇ。別にたいしたコトないじゃない?。」
「・・・・・。」
太公望は無言で普賢を見てから、足元に転がっている太乙(らしきもの)に目をやった。
「・・・十二仙でもこんなに違うのだのぅ・・・。」
「あはは。だって望ちゃんが、太乙の宝貝を奪ったじゃない?。だからだよぉ。太乙が死んじゃったのも望ちゃんの所為だね。」
「う。」
太公望は絶句した。
そして、この男はにこにこと笑いながらいつもイヤなことを言うのう・・・と呟いた。
「え、なんだって?。」
にっこりと笑って言う普賢に、太公望は、なんでもない・・・と言った。
「だが太乙は死んではおらん。封神されていないからな、まだ。」
そして太公望は打神鞭の先で太乙をつついた。
「・・・太乙?これ、太乙。生きているか?。」
太乙は転がって上を向いた。
額は割れて血がだらだらと流れている。
が、彼はにっこりと幸せそうに笑っている。
「ん・・・むにゃむにゃ・・・もう食べられな・・・。」
「こやつ、血を垂らしながらも、夢でモノを食っておる・・・。」
「ほら、やっぱり十二仙でしょ?。この生命力っていったらないよ!。」
「それはなんだか自慢になるような・・・ならないような・・・。」
太公望はそう言って、洞窟内を見回した。
さっきまでいた他の者の姿が無い。
「あやつらは・・・?。どこへ行った?。」
「ああ、ぶん仲は怒りにまかせてどこかに黒麒麟に乗って行っちゃったよ。なんか他の人生ゲーム相手を探しに行くんだって。ナタクは『あいつは俺が殺す!』って言ってぶん仲を追っかけて行っちゃったし、王魔君も『ぶん仲さまーっ!!。』って追っかけてったよ。」
「・・・お主その様子を、無傷で、どうやって見ていたのだ?。」
不審そうにそう聞かれると、普賢はにやりと笑った。
「世の中にはね、不思議なことがいっぱいあるんだよ。」
「・・・そ、そうなのか?。」
「そうなんだよ。」
「・・・ほう。」
やはりこやつは昔から怖い。
太公望はそう言って少し普賢から距離を置いた。
「これからどうする?望ちゃん?。」
「うむ・・・。太乙は見つかったし、いいのではないか?。わしはアンマンが食べたいから家に帰る。」
「ふぅん、ま、いいけど。」
「何か?。」
「望ちゃんは姫の結婚式には出ないの?。だって一応家臣じゃん?。」
「・・・結婚式は好かぬのだ。・・・でもやっぱり行った方がいいかのう?。」
「うん。」
「・・・あ、そ。分かった。じゃ、ちらりとだけ行くか。」
太公望は、普賢の笑顔を見て、やむなく結婚式に出ることに決めた。
(本当は行きたくないんだがのう・・・。あの蝉玉が大人しく結婚するとも思えんし、なんだか嫌な予感がする・・・のは気のせいだろうか・・・。)

「すみませんが。」
凛とした女性の声に、楊ぜんは後ろを振り向いた。
声の主は、黒い長い髪をした、美しい女性だった。
これはかなりレベルが高い・・・と楊ぜんは内心思った。しかも好みのタイプである。
が、なんだか不思議な違和感を覚えた。
(どこかで見たことがあったっけ?。)
少し考えたが思い出せない。
でもなんであれ、美しい女性は好きである。
楊ぜんは少し嬉しくなったが、彼女の表情が険しいのに気付いた。

一応、なんともない風に返事を返してみる。
「はい?。なんでしょうか。」
「・・・貴方は、周城の姫発王子とお聞きしましたが・・・。」
「そうですよ。」
「失礼ですが、身分証明書を見せていただきたい。」
楊ぜんは、自然に、懐から小さなカードを取り出した。
「これですよね?。」
少し目を細めて、彼女はカードを見詰めた。
「ええ、ありがとうございます。」
彼女は危ない、と楊ぜんは思った。この女性は自分のことを何かしら疑っている。
「では、貴女のお名前は?。」

わざとにっこり笑って、楊ぜんは聞き返した。
彼女は少し、その暗色の瞳で楊ぜんの蒼い瞳を見つめた。
そして、それから言った。
「・・・私は竜吉公主を申す者。姫の近衛兵をしております。はじめまして。」
「こちらこそ。」
二人はなんとなくぎこちない握手を交わした。
その気まずさを無くすように、やんわりと笑って楊ぜんは言った。
「こんなお美しい女性が、近衛兵だなんて、私も姫になりたいものです。」
それを聞き、竜吉公主は微笑った。
「お上手なことを。あなたが姫であったら、私なぞ霞んでしまいます。」
「貴女のような美人が霞むなんて、有り得ないですよ。」
ほとんど本気で、楊ぜんは言った。
凛々しさ、気高い雰囲気になんだかとても好感を覚えていたのだ。
楊ぜんの言葉に、彼女は不思議な目つきをして笑った。
「・・・そんな言葉を今まで何人に言ってきたのしら?。」
「心外ですね。貴女が初めてですよ。」
「ふふ。嘘。」
「嘘だなんて・・・・あ、いや、そういえば、昔貴女に似た女性に会ったことがあります。その時にも同じことを言ったかな・・・。」
「やっぱり。」
「やっぱり、だなんて酷いですね。」
竜吉公主は、それを聞くと、唇の端を釣り上げて笑った。
今までの笑いと少し違っていた。
そして、彼女は腰から何かを取り出した。
「これを。」
楊ぜんは眉間に皺を寄せて、彼女の手にあるものを見た。
そして、言葉を失い、彼女の顔を見た。
「貴女は・・・・!。」


 

 

 

第4章


場所‐竜髭虎城大広間

「さあて、あと1人が問題ね。」
蝉玉は腰に手を当てて、言った。
彼女なりに、苦渋に満ちた表情をしている。
「んー誰っすかねぇ・・・。」
「ああ、どうかあたし好みの人でありますようにっ!!。」
「・・・・・姫好みってのは、ちょっと・・・無理かもしれないっすねぇ・・。」
「何か言った?。」
「あ・・・い、いえ。」
(スープー、カンペを取り出す。『ここで、最後の王子乱入−スープー象はひっそりと退場』・・・・って、王子がなかなか来ないっすよ!
!。)
(会話を引き伸ばすっス・・・!。)
「そ、そういえば・・・っと、ご主人はどうしたッスかねえ。」
慌ててスープーがそう言うと、蝉玉は、あくびをしながら言った。
「あん?太公望?。しーらないっ。カンケーないもの。」
「・・・う。冷たいッスねえ・・・。」
「だってあいつ五月蝿いんだもの!。がみがみさー。心配しなくたって大丈夫じゃないの?。普賢真人もいるし。あの人って何気に最強っ
ぽいじゃない。」
「んー・・・そうっスねえ・・・確かに普賢さんは強そうっス。」

どっかん!!!!。

突然、轟音が鳴り響いた。

「何っ!? 何何何何っ!?。」
「何っスかねえ!?(内心、ほっ。)。」

二人で、音のした方を見ると、壁がふっとんで瓦礫の山と化していた。
土煙・・・というかコンクリート破壊煙が立ち昇っている。
「ああ・・・また修理費がかかるわ。パパが可哀相・・・。」
「んー・・・。そうっスねえ・・・。」

しばらくして、
その壁にあいた大きな穴から音楽が流れてきた。
ちゃらりりりらーん、じゃんじゃかじゃーん、ぱららららーん。るるるー。
「・・・・何・・・このゴージャスな音楽は・・?。」
「う・・・なんか嫌な予感っスねえ・・・。・・って、あっ!!。」
スープーが何かに気付いたように声をあげた。
「どうしたの?。」
「こ、これを見るっス・・・・。」
蝉玉が目を向けると、そこにはたくさんの薔薇がにょきにょきと生えて来ていた。
「げっ。」
薔薇は凄い勢いで生えてゆき、いつのまにか大広間はいろとりどりの薔薇で埋まってしまった。
「森が出来てしまったわ・・・・。」
「し、しかもところどころにユリ科ヤマユリも生えてるっス・・・。」
「諸君!!。」
穴から大きな声がした。
と同時に、たくさんの紙ふぶきが穴から舞い出た。
そしてその紙ふぶきをバックに、人影が現れた。
影はどんどんその色を濃くして行き、やがて実物があらわになった。

「やあ、みなさん、僕が最後の王子。MR C.公明だよっ!!。待たせて悪かったね。セットやメイクやらに手間取ってしまったっていうわけ
さ!。」
(監督→バカヤロー!!)

「うわ・・・すごいのがあらわれたっスね・・・。」
スープーが呟いた。

が、蝉玉からの反応がない。
「・・?。どうしたっスか?。姫。」
スープーが横を見ると、彼女の手が震えているのが分かった。
「い・・・。」
「?。」
「い、い、いやあああああああっ!!!!。」
「!!。」
蝉玉が突然叫んだ。悲鳴に近い。
そして頭に手をあててかきむしると、彼女は走り出した。
「!。どこ行くっスか!?スパ・・・・姫さまっ。」
「いやあああああああ。」
ドップラー効果を効かせつつ、蝉玉はC公明の横を走りぬけて、穴から外に出て行ってしまった。
すごい勢いに、スープーはしばらく唖然とした。
「はっ!!。」
(またまたカンペを取り出すスープー。「・・・こんなのないっスよ・・・台本に・・。」)

「ふふふふっ。彼女は照れ屋さんだなあ。僕の華麗さに、恥ずかしがって台本も無視してしまったよ。」
「・・・どーしてそう、自分にいいようにとるっスかねえ・・・。」

(舞台裏:スープー「監督!どうするっスか!?。」監督「うーん・・彼女、一応主役だしねえ、彼女のアドリブに任せるしかないよ。」スープー「んな適当でいいんスか!?。」監督「だってぇ、この話もとからストーリー性ないしぃ。」玉鼎「・・・貴様っ、そんなくだらん茶番に私と楊ぜんを付き合わせおって・・・!!。斬ってくれるわ!!。」
楊ぜん「師匠!。僕けっこう楽しんでますし、いいですよ。ね、公主。」竜吉「うむ。そうだな。」(←ほのぼの二人)
玉鼎「・・・パパよりもお友達の方がいいんだね・・?。」楊ぜん「師匠・・・別にそういう訳じゃ」監督「さー、次にレッツ・ドン!」)


場所−竜髭虎城庭園

「なんだとぉー!?城の修理をしろって!?。」
黄飛虎が大声で叫んだ。
城からの連絡が届いたのである。MR.C公明の壊した穴の修理の依頼だ。
その司令を告げた使者は、可哀相に、黄飛虎の唾をかけられ、しかも叫んだ時の突風により、地面に叩き付けられていた。
「・・・ちょ、ちょっとあんた大丈夫さ?。」
次男の天化が飛虎の脇から、苦笑いしながら顔を出した。
親父、ばかでかいんだから気をつけるさ・・・と彼は呟いた。
が、当の飛虎はそれに全く構わずに(というか気付かずに)、頭を抱えて、また叫んだ。
「ついこの間修理したばっかりじゃねえかっ!!。やっとこれから休みだってぇのによぉぉ!!!。」
今日は長年心待ちにしていた「広島×巨人」のテレビ中継じゃねえかああああ!、と、叫ぶ黄飛虎を見て、四大金剛が苦笑いする。
「兄貴は、広島が好きだなあ。」
「巨人戦じゃねえとテレビ放映しねえからな広島って。マイナーだから。」
「うるせえっ!!。」
黄飛虎はかきむしって爆発した頭を振りつつ、また大声を出した。
実は、四大金剛の言う通り、彼はかなりの野球ファンであった。密かに一族で野球チームさえ結成している。
「おやじ・・・諦めるさ。仕事じゃ、しゃあねえさ。」
空飛ぶ不思議なタバコを加えつつ、天化がそう言った。
別に彼は野球ファンではない。どちらかというと今はK−1が好きである。
黄飛虎は放心状態でぼうっと、息子のタバコの先の赤い火を見つめた。白い煙がそこから現れ、ゆらゆらと空気に溶け込んでいる。
が、突然、彼はかっと目を開いた。
「お、おやじ?。」
その様子に気付き、天化が恐る恐る声をかける。
黄飛虎ががっと立ち上がった。
「そうじゃねえか!!。」
「・・・・?。」
「それがあった!。」
「だから何さ。」
黄飛虎はそのままの勢いで、がんがんと歩くと、天化の肩にがしりと手を置いた。
思わず天化がのけぞる。
「へ・・?。おやじ?。」
「今日の仕事はおめえに任せることにした、天化よ。もうそろそろ家督を継いでもいい頃だしな!。」
「は。」
天化は訳が分からず、目をぱちくりさせた。
そして、一時置いてから、ようやく意味に気付き、叫んだ。
「はーーっ!?。何言ってるさ、親父!!。」
「おめえはなかなか腕もいい。センスもある!!。よし、任せた。今日の仕事はおめえ1人でやるんだ!。」
「し、しかも一人?。叔父さんたち無しでやれってか!?。」
「そうだ。はっはっは。」
「はっはっはじゃねえさ!!。叔父さんたち何か言ってやってくれ。」
助けを求めて、四大金剛を見やると、彼らはにやにやと笑っていた。
天化はまずい、と直感する。
「うーん・・・俺たちも野球見たいしなあ・・・。」
「うんうん。それにもう歳だし。」
「『獅子は谷に我が子を落とす』ってやつだね、じゃ、それをジャマしちゃあなあ。」
「天化は才能あるから大丈夫だろ。」
予想通りである。
この叔父たちは天化が困るのを見て楽しんでいるのだ。
「ぜ・・・ぜったい嘘さ。俺っちが困らせたいだけさね・・・。」
四大金剛:「違う違う。そんなことナイナイ。」
「あるに決まってるさー!!。」
天化の悲鳴が空しく、庭園に響いた。


ところ代わって−とある丘の上−。

「いや、あ、はーはー、ぜーぜー・・・・。」
蝉玉姫は丘の上まで叫びながら駆けて来ていた。
さすがにもう体力の限界のようだった。
がくがくする膝を押さえて、震えを止め、その場に座る。
「・・・な、何なのよっ。あの気持ち悪いやつは・・・・!!。」
思い出すだけでも気持ち悪い・・・。蝉玉はああいうタイプの「濃ゆさ」が大の苦手であった。
「しかもあれが最後の王子・・・。」
もう、絶望だった。何の望みもない。
あの中から本当に結婚相手を選ばなければならないのだろうか。
「本当に、嫌。」
少しだけ、ほんの少しだけ、涙が出てきた。
「姫なんかに生まれるんじゃなかったなあ。」
退屈だし、つまらないし、おまけに色んなものに束縛されて。

メリットなんかひとつもないように思う。
膝を抱えて、顔をうずめた。両側にぴんと突っ張ったお下げが、少し傾いた。
「これから、どうしようかな・・・・。」
こういうのを、途方に暮れるって言うのかしら、
と蝉玉はつぶやいた。

(監督:「いいねえ、いいねえ蝉ちゃんいいねえ。」竜髭虎:「センちゃんがんばるにゃー!。」 楊ぜん「僕の出番はまだですか?。」
監督:「・・・・はいっ、3カメさんっ。今度は天化君映してっ!!(←無視)」)


太陽がぎんぎんに照っていた。
季節感もあったもんじゃない。なんでこんなに蒸し暑いのだろうか。
何もかもに苛々して、天化は舌打ちをした。
道具が、重い。
背中に積みあがった様々なモノが、光の影になって黒く重たくのしかかっている。
「こんなの1人でっていうのが無理さ・・・・。」
親父のバカヤロー、と言いたいところだったが、なんとなく言えなかった。
ふと、ため息をつく。
頭の上の麦わら帽子が微かに揺れた。
天祥から貰ったものである。
「にーさま、仕事がんばってね。」と、天使の笑顔で渡されたら、受け取らないわけにはいかない。つまり、仕事をしないわけにはいかな
い。
(これも親父たちの策略かな・・・・。)
そう思ったが、考えすぎか、とも思った。
「暑いさ・・・。」
庭から城までは少し歩かなくてはいけない。
整えられた(これも黄家がやったのだが)砂利道をさくさくと歩く。
また、空を見上げた。
雲一つない快晴−。
「ん?。」
天化は何かを発見した。
空からまっさかさまに落ちてくる。
いや、急降下してくる・・・・。
「鳥・・?。」
そうつぶやいた、瞬間、天化の頭の上から麦藁帽子が奪い去られていた。
「あっ、俺っちの帽子!!。」
急に涼しくなった頭を触わりつつ、帽子を奪った犯人を目で追う。
やはり鳥だった。
でもなんだか間の抜けた顔をしていた。
しかし速い。
鳥は帽子をくわえ、あまり長くない(というか短い)羽をばたつかせながら、天化の頭上に舞い上がった。
「ああ!!。待つさ!!。」
天化はその場に道具を下ろすと、その鳥を追って、丘の方へと走り出した。

(5カメ−蝉玉)

仰向けに転がると、空が青かった。
落ちてきそうなほどに鮮やかな色彩。絵の具を塗りつぶしたように明るく、痛い。
「はあ・・・。」
おさげが崩れるのも気にせず、緑色の草原にどっぷり頭を埋めながら、蝉玉はため息をついた。ふくらはぎが少しちくちくした。
「もー・・・これからどうしよっかなあ・・・。」
いくあてが無い。
城に戻ったら婚約させられてしまうし、だからと言って、太公望の家などに行っても逆に連れ戻されるだろう。
「パパに頼んでも無理だろうなあ。」
蝉玉の父、九公王は蝉玉にとてつもなく甘い。だが、去年新しい妃を貰ってからは、少し変わった。いままで通り優しいのは優しいのだが
、権限が失われてしまったのである。
だから、何もしては貰えない。
「あの継母カンペキにいっちゃってるしねえ・・・。」
継母の美しい姿をふと思い出して、蝉玉はまたため息をついた。
と、
静かだったこの空間に、何か雑音が入り込んできた。
とても小さな音だったが、しっかり耳に届いていた。
「何?。」
眉間に皺を寄せ、それから半身を起こして、音源の方を振り向く。
目線の方向には何も無い。ように、最初は見えた。
だが、

「え?。」
雑音が少しずつ大きくなっている。
耳を澄ますと、ばたばたばた・・・という音と、どたどたどた・・・という音の二種類が確かに聞こえた。
「ばたばたばた・・・・?。」
いやな予感がした。
目を凝らして、もう一度、中空を見ると、そこには点のように見える黒い影。
「あ・・・あれはもしかして・・・・。」
黒い影は空気の流れに身を任せるように、ゆらりと飛びながらこちらに近づいている。
それは ―
「とっ・・・鳥ぃいい!?。」
蝉玉は思わず立ち上がった。

もう一回よく目を凝らして見てみると、それはやはり、鳥だった。
随分変な顔をしてはいたが。
「いやあああああああああああっ!!。」
蝉玉は走り出した。
鳥がこちらに向かってくる。
「来ないでっ!!。」
その声は鳥に届いてはいないらしく、(もしくは聞こえなかったのか?) 鳥は確実に蝉玉に向かってくる。
「いやあああああ!!!。」
フェイドアウトする蝉玉の叫び声に、別の声が重なった。
「・・・・ま、待つさぁああ・・・・ぜーぜー・・・。」
「ぐもぐもっ!!!。」
「いやああああ!!。」
「帽子を・・・・かっ、返すさ・・・・。」
「ぐもももっ!。」
「いやああああああ。」

静かだった丘は、なぜか突然不協和音(笑)の嵐となっていた。

 

- 続く -

 

 宝話扉頁へ戻る / 次の頁へ