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FROM
MENOU-sama
「責任という名の約束」
「むぅ・・・。暑くて眠れない・・。」
夏の終わり。もう、涼しくなってもいいくらいなのに全然蒸し暑い。私はテントの外に出た。
「今日は、くもりか・・・。くもってるとますます暑く感じるわ。」
見上げた空には、星1つ浮かんではいなかった。体にまとわりつく長い髪をうっとうしげに後ろへ払った。
「暗いからパパに行くなって言われてるけど、いいわよね。ちょっとだけだもん。」
テントより少し奥まったところに小さな湖というか、水場がある。ハニーを追いかけてる時にたまたま見つけた場所。まだ、パパ以外誰にも言ってない、私の秘密の場所である。
「いざとなったら五光石もあるし、大丈夫!」
怖いと思う心を突き放して茂みへと足を踏み入れた。森の中は思ったより寒くて、身震いした。どこを見ても真っ暗で私一人しかいなくて。そう考えると、無性に誰かに会いたくなった。誰かって別に誰でもいいわけじゃない。今はなぜだかあいつに会いたかった。未成年のくせにいっつも煙草くわえて、大人ぶってるあいつ。私の事からかうくせに寂しい時は必ず隣にいてくれるあいつ。
「こんなとこにいるわけないか・・・。」
あきらめて進む。そのうちに水の音が聞こえて、私はほっと胸をなでおろした。がさがさと茂みをかきわけたそこには、昼間のように明るく照らされた湖があった。蛍が舞って、水面を輝かせる。
「き・・れい。」
思わず口にした言葉が妙にその場所を表現できてない気がした。寒さも暑さも感じない。恐怖感も無くなった。でも・・・。
「一人で見るの、もったいないな。」
孤独感だけはさっきより増した。ここには光があるけど、それは私のために用意されたものじゃない。私の光はどこなのだろう・・・?会いたい気持ちだけが膨らんで、いつしか私は・・・。
「泣いてるさ・・・?」
いつのまにか目の前に誰かがいた。逆光で顔がよく見えない・・。でも、声はしっかり知っていて。
「天化・・・!?」
「は?」
「ど、どうしてここにいるのよ!」
「それはこっちのセリフさね。こんな夜中に1人で・・・。」
「あ・・つくて眠れなかったのよ!」
心臓は鐘を鳴らしていて、言葉に詰まった。
「おれっちも眠れなくて、散歩してたさ。そんで、偶然ここで泣いてるあーたを見つけたさ。」
「べ・・別に泣いてなんか・・・!!」
「いいさね、意地はんなくても。どうせ、モグラの事考えてたんだろっ!?」
語尾が強くなった。怒ってるのだろうか・・・。
「違うわよ・・・。考えてたのは違う人のこと。」
「誰の事さ?」
率直に聞き返されても、あんたの事よ。なんて言えるはずがない。あんたに会いたくて泣いていたなんて口が裂けても言えない。
「教えるわけないでしょ!あんたなんかに。」
かわいくない事ばっか口にして、真実を隠そうとする。
「別にいいさね!気になるもんでもないさ!!」
天化はそっぽを向いた。あんたはいつもごまかされて。それ以上は聞こうともしない。私は自己嫌悪に陥る。
「冷たっ!」
空から水が降ってきた。見上げるとさっきのくもり空が顔を出していて。雨が顔を一粒二粒・・・と濡らした。そのうち、そこにはいられないほどの量の雨が降り出した。
「蝉玉、こっち来るさ!」
天化が手をこまねいたのは大きな木の下。そこだけ地面が乾いていた。濡れて帰れば、パパが余計な心配をする。しょうがないか。と天化のいる場所へ。大きな木といっても雨を防げる面積は小さくて、二人肩を並べているしかなかった。
「当分止みそうにないさね。」
「え・・!?ちょっと、それは困る!」
「何でさ?」
「だって・・・!」
ふと、見上げた先には天化の顔がすぐ近くにあって、強い瞳がこっちを見ていてそれ以上言葉を続ける事が出来なくて、二人して顔をそらした。
「ねぇ・・・まだ、傷ふさがってないの・・・?」
まだ赤い顔を向ける事が出来なくて、苦し紛れに聞いた。
「・・・・・。大丈夫さ。」
「包帯に血にじませといて大丈夫。なんて全然説得力ないわよ。」
腹の包帯を指さす。
「そうさね。」
天化は哀しげに笑った。
「まだ、戦うの・・・?」
トーンの下がった声に天化は私を見た。私は無意識に見上げていた・・・瞳がぶつかる。
「誰が止めようとしても、おれっちは戦うさ。死ぬまでずっと。」
そういうあんたの強さがすごく怖くて。私はうつむいた。
「私が止めても・・・?」
「・・・・・。」
沈黙が長く感じる。耐え切れなくて、うつむきながら泣いてしまった。
「だって・・・!もう会えなくなりそうで・・・!!」
怖い。でも・・・。
「ははっ。私なんかが言ってもだめだよね・・・。何言ってるんだろ。今のなし!気にしな・・・!」
雨は更に激しさを増して。私の鼓動もはやくなった。天化の鼓動が聞こえる。私は抱き寄せられていて、あの人の顔がよく見えない位置にいた。抱きしめられる力は強くて、逃げられなかった。逃げようとも思わなかった。
「おれっちのためになんか、泣くな!」
「・・・・。」
あんた以外の事じゃ泣かないわよ。あんたのためにしか泣いてやんないんだから・・・。
「責任とってよ・・・。」
「責任・・・?」
「戦ってもいいから、ちゃんと帰ってきて・・・。」
「・・・約束できねぇさ。」
「約束じゃなくて責任!!あんた、私を泣かせたんだから!責任取りなさいよ。」
見上げたら、さっきよりもっと近くに天化の顔。二人して赤くなった。あんたは私を離そうとしないから、そのまま顔をうずめた。
「しばらくこうしてて。なんか、天化に赤くなった顔見られるのしゃくだから。」
でも、赤くなった顔は元に戻りそうになくて。いつのまにか、雨の音が小さくなっていた。
「あ、雨やみそうさね。どうする?」
「どうするって、雨やんだら帰るわよ。」
顔を見せないまま答えた。
「もう少し降っててくんねーかな・・・。」
「ん?なんか言った?」
「い・・言ってないさ。」
天化の鼓動がはやく聞こえたのは気のせいだったかな。
「ねぇ、ちゃんと責任とってよ。」
「・・・はいはい。」
このまま一緒にいられたらいいのに。本気でそう思った。
翌日。慌しく一日が始まった。天化が一足先に朝歌に乗り込んだらしい。太公望が後を追ったという。その日の内に天化の死が伝わった。
約束なんて責任なんてあんたなんて元から信じてない。だから、責任とってくんなくても別にそんなにショックじゃないし。ただ、あんたがいないんだって。ただ、寂しくても隣にはいないんだって思っただけ。また、あんたのために泣いてしまっただけ。あんたがいないと怖いのに。抱きしめてよ。怖がる私をなだめるように。
- 終 -
作者コメント>
初めまして。瑪瑙と申しますです。すいません。最後の方めちゃめちゃです。 蛍生息の時期は不明です。夏という事は確かですが・・・。うちの中での蝉玉ちゃんは心がかよわいので、よく泣きます。天化ちゃんはその蝉ちゃんを抱きしめるしか出来ない奴です。この小説を読んでがっかりされた方。ごめんなさい。
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